「○○ オワコン」と検索していませんか?それ、確証バイアスかもしれません

心理学

「オワコン」って言うけど、本当に終わってる?

最近、「○○はオワコン」という言い方を、本当によく見かけます。

SNSでもYouTubeでも、とにかく何かの勢いが少し落ちると「オワコン」。新しいサービスが出てくると、それまで使われていたものは「オワコン」。少し前ほど話題にならなくなると、やっぱり「オワコン」。

便利な言葉ではあるんですが、かなり雑です。

先日、自分のサイトの検索クエリを見ていたら、こんなものが入っていました。

「LINEスタンプ オワコン」

「Gemini オワコン」

「Antigravity オワコン」

見た瞬間、ちょっと笑ってしまいました。

いや、みんな普通に使っとるやん、と。

もちろん、それぞれ事情は違います。

LINEスタンプは、作り手側から見れば、以前のように「個人がスタンプを作って販売すれば大きく稼げる」という市場ではなくなっています。参入者も多いですし、販売だけでまとまった利益を出すのは、かなり難しくなっています。

でも、それは「LINEスタンプが終わった」という話ではありません。

普通に使われていますし、企業や店舗が販促やコミュニケーションの道具として使うこともできます。個人でも、自分用、仲間内用、名刺代わり、キャラクター展開など、使い道はいくらでもあります。

「ビジネスとして難しくなった」と「存在価値がなくなった」は、全然違う話です。

Geminiも同じです。AIは特に、評価が短期的になりやすい分野です。

「今週はChatGPTの方がいい」

「今回の文章はClaudeの方がうまい」

「この用途では別のモデルの方が使いやすい」

こういうことは普通にあります。

ただ、それだけを見て、「Geminiはオワコン」と結論づけるのは、かなり乱暴です。

Geminiの価値は、単純なモデル性能だけではありません。

Google検索、Gmail、Google Drive、Googleドキュメント、スプレッドシート、カレンダー、YouTube、Android、Chromeなど、Googleはすでに仕事や生活のかなり深いところに入り込んでいます。

Geminiの強さは、そこにつながることです。

LLM単体で「どれが一番賢いか」を比べるだけでは見えません。

たとえば自動車を評価するときに、エンジンの最高出力だけを比較して、「この車は馬力で負けたから終わりです」と言っているようなものです。

実際には、乗り心地もありますし、燃費もあります。荷物がどれだけ載るかもあります。整備性もあります。道路との相性もあります。

AIも同じです。

モデル性能だけではなく、

何につながるのか。

何を参照できるのか。

どこまで実行できるのか。

ここまで含めて見る必要があります。

Geminiの場合、その後ろにGoogleの巨大なエコシステムがあります。しかも、その接続は今も増え続けています。ですから、ある短期間だけ切り取って「今週はChatGPTの方が良かった」「Claudeの方が文章がうまかった」という話と、「Geminiというサービス全体に価値があるか」は別問題です。

Antigravityについても同じでしょう。

別のAIエージェントが話題になったからといって、それまで使われていたツールが突然無価値になるわけではありません。役割が変わったり、得意不得意が見えてきたりするだけです。

なのに、検索クエリには「オワコン」という言葉が入ってきます。

調べるつもりが、答え合わせになっていませんか?

なぜでしょう。

ここで出てくるのが、確証バイアスです。

バイアスという言葉は、簡単に言えば「考え方の偏り」です。

人間は、すべての情報を完全に公平に処理しているわけではありません。経験、感情、先入観、周囲の意見などの影響を受けながら判断しています。

それ自体が悪いという話ではありません。むしろ、毎回すべてをゼロから考えていたら、日常生活は成立しません。

信号が赤なら止まる。

雨雲が出ていたら傘を持つ。

評判の悪い店なら少し警戒する。

過去の経験や知識を使って判断すること自体は、非常に合理的です。

ただ、その仕組みが強く働きすぎると、事実を見るよりも「自分がそう思いたい方向」に情報を集めてしまうことがあります。

その代表例の一つが、確証バイアスです。

確証バイアスとは、自分がすでに持っている考えや仮説を支持する情報ばかり集めてしまう傾向のことです。反対の情報を無意識に軽く扱ったり、そもそも探さなかったりします。

たとえば、SNSやYouTubeで、

「Geminiはもうダメ」

「LINEスタンプは終わった」

という投稿を見たとします。

そこで少し気になります。

「え、本当に?」

ここまでは普通です。

問題は、その次です。

Googleを開いて、「Gemini オワコン」と検索する。

この検索、よく考えるとかなり面白いんです。

すでに検索語の中に結論が入っています。

本当にGeminiの現状を知りたいのであれば、

「Gemini 現状」

「Gemini 利用者数」

「Gemini 強み」

「Gemini ChatGPT 比較」

などでもいいはずです。

ところが、「Gemini オワコン」と入力する。

すると検索エンジンは当然、「Gemini」と「オワコン」に関連する情報を返します。

「Geminiはオワコンなのか?」

「Geminiが使えないと言われる理由」

「ChatGPTに負けた?」

そんな記事や動画が並びます。

すると、「ほら、やっぱりみんなGeminiは終わったと思ってる」となりやすい。

でも、それは検索エンジンがそう判断したわけではありません。あなたが「オワコン」という条件を付けて検索したから、それに合う情報が出てきただけです。

ここが重要です。

検索エンジンは、基本的には質問に答えています。

「Gemini オワコン」と聞けば、「Geminiとオワコンに関係する情報」を返します。

つまり場合によっては、検索して調べているつもりで、最初に自分が持っていた考えを検索結果にもう一度表示させているだけという状態になります。

これでは、調査というより答え合わせです。

たぶん今は、この流れがかなり増えています。

SNSやYouTubeで刺激の強い言葉を見る。

「○○は終わった」

「○○は危険」

「○○はやめとけ」

「○○は効果ない」

「○○は怪しい」

それを、そのまま検索窓に入れる。

「○○ オワコン」

「○○ 危険」

「○○ やめとけ」

「○○ 怪しい」

「○○ 効果ない」

これらは全部、似た構造を持っています。検索前から、評価語が入っています。

もちろん、その検索自体が悪いわけではありません。

「世の中で、なぜ○○が危険と言われているのか知りたい」という目的なら、非常に合理的です。

「Geminiがオワコンと言われている理由を知りたい」という調査なら、「Gemini オワコン」は適切な検索語です。

ただし、その検索結果を使って、「Geminiが本当にオワコンなのか」を判断するのは別の話です。

一歩引いて、事実をフラットに見つめ直してみる

そもそも「オワコン」とは何でしょう。

ここを分解しないといけません。

利用者が減っているのか。

売上が落ちているのか。

成長率が鈍化しているのか。

競合に負けているのか。

新規参入が難しくなったのか。

話題性がなくなったのか。

単に自分の周囲で見かけなくなっただけなのか。

全部意味が違います。

LINEスタンプなら、「以前より販売で稼ぎにくくなった」これはあり得ます。

でも、「誰も使っていない」とは限りません。

Geminiなら、「ある時点のモデル性能で他社が上回った」これはあり得ます。

でも、「GoogleのAI戦略そのものが終わった」とは全く別の話です。

Antigravityでも、「別のツールが今は話題」ということと、「Antigravityに使い道がない」ということは違います。

「オワコン」は、その辺を全部ひとまとめにしてしまう言葉なんです。

本当に調べたいのであれば、「オワコン」という言葉をいったん外した方がいいです。

たとえばGeminiなら、

「Gemini 利用者 推移」

「Gemini 新機能」

「Gemini Workspace 連携」

「Gemini API」

「Gemini ChatGPT 比較」

など、観測できる項目に分解します。

LINEスタンプなら、

「LINEスタンプ 売上 推移」

「LINEスタンプ 市場」

「LINEスタンプ 利用者」

「LINEスタンプ 販促 活用」

といった具合です。

こうすると、少なくとも「終わったかどうか」という結論から少し距離を置けます。

さらに言えば、反対方向の検索もした方がいいでしょう。

「Gemini 強み」

「Gemini 活用事例」

「LINEスタンプ 活用事例」

などです。

自分の仮説に合う情報だけでなく、反証になりそうな情報も取りに行く。

これだけで、確証バイアスはかなり弱くなります。

「オワコン」という言葉には、一つ困ったところがあります。

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