酔っぱらいコピーライターが覚醒した。
ある夜、酒を飲みながらChatGPTに適当なお題を出してもらって、ひたすらキャッチコピーを作っていた。
目的は特にない。
仕事でもない。
誰かに頼まれたわけでもない。
酔っぱらいが夜中に思いつきで始めただけである。
ただ、やっているうちに妙な感覚が出てきた。
「あれ。これ、俺ずっと同じ作り方してないか?」
そのときに見えてきたのが、
圧縮 → ずらし → ブランド名で復号
という流れだった。
とりあえず作りまくった
その夜に作ったコピーをいくつか残していた。
積もる灰皿。時計見過ぎ。CITIZEN
空白の余韻。マクセル
削って、光る。ジュエリーマキ
滑らかな肌触り。ぺんてる
解説しない国語の先生。おかげで小説家になれました。
理不尽?まだ社会人一年目。リクルート
止められない思い。ブリヂストン
摩擦上がってる。オーバーヒート寸前。九州電力
電気いる?永久機関でいいやん。カロリミット
酔っ払いの理論は正しい。〇〇法律事務所。
余計なことを言いすぎる。誰か止めて!アベノマスク
溢れ出る知識。河合塾
こうやって並べると、それっぽいものもある。
一方で、数週間たってシラフで見ると、
「これ何を言いたかったんや?」
というものも普通にある。
特に酔っぱらいが作ったものなので、本人に聞いても正解はもう存在しない。
だが、それでいい。
夜中のコピー大会なのである。
コピーは説明しすぎると弱くなる
今回やっていて、自分が無意識にやっていたことがひとつある。
情報を削っている。
商品について全部説明しようとはしていない。
むしろ逆で、説明に必要な部品をかなり捨てている。
たとえば、
「積もる灰皿。時計見過ぎ。CITIZEN」
これも、まともに説明したら長くなる。
時間を気にしながら何本もタバコを吸っている人がいる。
灰皿には吸い殻が積もっていく。
時計を何度も確認する。
その「時計」という一点だけを最後にCITIZENにつなぐ。
説明すると野暮である。
だから削る。
コピーは情報を増やす仕事に見えて、実際にはかなり「捨てる仕事」なのかもしれない。
少しだけ意味をずらす
もうひとつやっていたのが「ずらし」だった。
たとえば、
「削って、光る。ジュエリーマキ」
宝石を削る。
人間も削られる。
削った結果、光る。
意味としては単純なのだが、最初から宝石の話として書くと普通になってしまう。
そこで、少しだけ主語を消す。
読む人の頭の中で、
「何を削るんだ?」
という空白ができる。
最後にブランド名を置くと、その空白が埋まる。
これがたぶん、自分の中でやっていた
圧縮 → ずらし → ブランド名で復号
というやつだ。
コピー単体では少し意味が足りない。
でもブランド名まで読んだ瞬間に、
「ああ、そういうことか」
となる。
ブランド名を答えとして使っている。
わからないギリギリまで削る
個人的には、この辺がコピーを書いていて一番面白い。
全部わかるようにすると説明文になる。
かといって削りすぎると、ただの意味不明になる。
その境界線を探す。
たぶん自分は昔から、そこが好きなのだと思う。
文章でも同じである。
十説明するところを三まで削る。
残り七を読者側に補完してもらう。
うまくいけば、説明された文章よりも頭に残る。
失敗すると、
「何これ?」
で終わる。
酔っぱらいコピー大会では、その失敗作も大量に生まれた。
数週間後に見ると、普通にダメなのもある
作っている瞬間は、
「俺、天才かもしれん」
くらいの勢いになっている。
酒も入っているのでなおさらである。
しかし数週間後。
シラフになった自分がメモを開く。
「……これは何?」
となる。
コピーというものは怖い。
作った瞬間の高揚感と、時間を置いて読んだときの評価が普通に違う。
ただ、それも面白い。
いいコピーだけ残そうと最初から考えていたら、おそらくこんな量は作っていない。
ダメなものを大量に出したから、その中に
「これは意外と好き」
というものも混ざった。
プロでも遊びながら書く
一応、普段は文章を書く仕事をしている。
だからコピーを書くときも、もっと真面目にやろうと思えばできる。
ターゲットを設定して、商品の特徴を整理して、競合を調べて、訴求軸を決める。
それはそれで正しい。
でも今回は全部ない。
酒を飲む。
ChatGPTにお題を出させる。
思いついたコピーを書く。
笑う。
次。
完全に遊びである。
それでも、数を出していると自分の癖が見えてくる。
「俺はこういうところを削るんだな」
「ここで意味をずらすんだな」
「最後に固有名詞を置いて回収するのが好きなんだな」
理論からコピーを作ったのではない。
コピーを大量に作ったあとで、理論っぽいものが出てきた。
順番としては完全に逆だ。
でも、僕はだいたいいつもこんな感じである。
先にやる。
あとから理由を見つける。
ということで、酔っぱらいコピーライターによる深夜の実験結果。
結論。
圧縮して、少しずらして、最後にブランド名で復号する。
たぶん使える。
ただし、
「電気いる?永久機関でいいやん。カロリミット」
については、今見ても何を考えていたのかよくわからない。
酔っぱらいとは、そういう生き物である。


